Ⅳ 無知の暴露/真実の暴露 5-2

警察署の一室で、高山夫婦殺害事件の証拠品の山を目の前に、萩原たちはあてどない思考の迷路に迷い込んでいた。

そこへ山中から電話がかかってきた。

萩原は山中が興奮気味に説明するマークの謎を聞いた。

そうか、そうだったのか、老母が最期に発した言葉は、そういうことだったのか。

やはり真彦はそこにいたのだ、と萩原は強く確信した。

萩原は、山中からの電話を切ると、電話の内容を新島に説明した。

萩原たちに再び光が差し始めた。

「新島、後は証拠だ。証拠が必要なんだ」

萩原は神経を今まで以上に研ぎすませた。

「新島、殺したのは?」

「おそらく中島」

「なぜだ?」

「金のためとはいえ、そんな簡単に人は殺せません。国定同様に真彦にはそのようなことはできないと思われます。中島の人物像からして人を殺すのを厭わない性質の奴かと」

「同感だな」

「それに、真彦が殺したのであれば、単独の方がいいでしょう。後でゆすられることもないですし」

「それじゃ、今、ゆすられているか?」

「いえ、おそらく前もって金の約束はしているとは思いますが、中島自身はどちらかというと金の方は二の次でしょう。まあ、忘れた頃に他の連中がゆするかもしれませんけど。なにせ真彦にはまだ手付かずの遺産がありますから」

「同感だな。それじゃこれは一種の嘱託殺人だな」

「おそらく。真彦が中島に頼んで両親を殺させた」

「単なる嘱託なら、いずれバレる可能性がある。だから、エサを撒いて現場に国定をおびき寄せておいた・・・」

「同感です」

「殺人事件そのものを国定になすりつけたって訳か・・・警察の捜査や、証拠ありきの取り調べまで計算に入れやがって・・・」

畜生、舐めやがって!

萩原は手に持っていたコーヒーの紙コップを丸めて、ゴミ箱に投げつけた。

ゴミ箱に入らなかった紙コップの丸まったものを新島は拾い上げて、少し離れたゴミ箱に投げ入れた。

新島の手から放たれたそれは、スーと吸い込まれるようにゴミ箱に入った。

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