「な・・・ナカジマ?・・・さぁ知らないね。何か関係あるの?…」
「…」
萩原は、高山真彦の表情が一瞬曇ったのを見逃さなかった。
「そうですか、ありがとうございました」
萩原と新島は、真彦のアパートを去った。
知っている、高山真彦は知っている…というよりも真犯人は高山真彦だ!と萩原の嗅覚が、何度もそう囁いていた。
高山真彦にはアリバイはなく、動機はある、しかし証拠はない、国定徹との接点も見えてこない。
たまたま国定徹が盗みに入って、その後を真彦がつけて国定を気絶させ両親を殺した?
そんな偶然があるものなのだろうか?
偶然でなければ、自ずとそれは必然となるが?
何かがおかしい・・・いや、何かが欠けている、そう萩原慎太郎が黙考していると、新島の運転する車は高山家に着いた。
新島が家の中に声をかけると、小ざっぱりした格好の中年の女が出てきた。
「はい?どなたですか?」
「警察のものです」
「あ、はい、何か?」
「少しお話を聞かせてもらえませんか?事件があった頃のご両親の様子だとか・・・真彦さんのことを」
「あ、えぇ、構いませんけど、でも、もう犯人が逮捕されて裁判も始まってますよね?」
「ええ、そうなんですがね。まあ、なんていいますか、証拠固めとでも言いますか・・・」
新島は、適当に言い繕った。
「はぁ、そうですか。まあ立ち話もなんですから奥へどうぞ」
「はい、それではお邪魔します」
萩原と新島は、もう何度か訪れている高山家の居間に通された。
「お片付けの途中ですか?」
新島が部屋を見回しながら、殺された高山夫婦の娘に尋ねた。
「ええ、徐々にですけどね。少しずつでもやりませんとね・・・真彦がやってくれればいいのですけど、何分昔からそういったことは苦手な子でして」
「お姉さんは確か、今は東京でしたよね?」
新島が手帳のメモを見ながら言った。
娘・松本巴江・47・東京在住。
「えぇ、ですからね、真彦が近くにいるんですから、長男なんですからね、やってくれればね、わたしも楽でいいのですけど。何も知らない子でしてね。ですから葬儀とかも、うちの主人とそれはもう大変でしたよ。まあ、でも犯人がすぐに捕まってくれましたし、それに真彦の借金が綺麗に片付いたのがせめてものですよ」
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