Ⅲ 弁護士の直感+刑事の嗅覚 VS犯人の姦計 4-3

「な・・・ナカジマ?・・・さぁ知らないね。何か関係あるの?…」

「…」

萩原は、高山真彦の表情が一瞬曇ったのを見逃さなかった。

「そうですか、ありがとうございました」

萩原と新島は、真彦のアパートを去った。


知っている、高山真彦は知っている…というよりも真犯人は高山真彦だ!と萩原の嗅覚が、何度もそう囁いていた。

高山真彦にはアリバイはなく、動機はある、しかし証拠はない、国定徹との接点も見えてこない。

たまたま国定徹が盗みに入って、その後を真彦がつけて国定を気絶させ両親を殺した?

そんな偶然があるものなのだろうか?

偶然でなければ、自ずとそれは必然となるが?

何かがおかしい・・・いや、何かが欠けている、そう萩原慎太郎が黙考していると、新島の運転する車は高山家に着いた。

新島が家の中に声をかけると、小ざっぱりした格好の中年の女が出てきた。

「はい?どなたですか?」

「警察のものです」

「あ、はい、何か?」

「少しお話を聞かせてもらえませんか?事件があった頃のご両親の様子だとか・・・真彦さんのことを」

「あ、えぇ、構いませんけど、でも、もう犯人が逮捕されて裁判も始まってますよね?」

「ええ、そうなんですがね。まあ、なんていいますか、証拠固めとでも言いますか・・・」

新島は、適当に言い繕った。

「はぁ、そうですか。まあ立ち話もなんですから奥へどうぞ」

「はい、それではお邪魔します」

萩原と新島は、もう何度か訪れている高山家の居間に通された。

「お片付けの途中ですか?」

新島が部屋を見回しながら、殺された高山夫婦の娘に尋ねた。

「ええ、徐々にですけどね。少しずつでもやりませんとね・・・真彦がやってくれればいいのですけど、何分昔からそういったことは苦手な子でして」

「お姉さんは確か、今は東京でしたよね?」

新島が手帳のメモを見ながら言った。

娘・松本巴江・47・東京在住。

「えぇ、ですからね、真彦が近くにいるんですから、長男なんですからね、やってくれればね、わたしも楽でいいのですけど。何も知らない子でしてね。ですから葬儀とかも、うちの主人とそれはもう大変でしたよ。まあ、でも犯人がすぐに捕まってくれましたし、それに真彦の借金が綺麗に片付いたのがせめてものですよ」

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