「ん?なんだよ、いないはずっていうのは?現にあの家には、高山夫婦がいたじゃないか?!」
新島が声を荒げる。
「ほら、そんな風にいつだって、刑事は…」
「国定…」萩原は、新島の肩を抑えながら言う。「国定、いいから、お前の言葉を続けろ」
「だから、じいさんとばあさんが、旅行に行くっていうから、俺はあの家に入ったんだよ!」
萩原慎太郎は、頭をガツンとやられた思いがした。
「なんで、そのことを取り調べで言わなかったんだ?」
新島が訊く。
「言ったさ、何度も言ったさ、でも、信じてくれなかったのはあんたらだろ?」
「くぅ・・・そうかぁ・・・」
しばしの沈黙の後、萩原はしぼるように言葉を吐いた。
萩原は、真犯人の尻尾に手を伸ばした気がした。
そして、呼吸を整えて国定に尋ねた。
「国定、そもそもどうして高山さんとこに入ろうと思ったんだ?誰かに、何かを・・・聞いたのか?」
萩原慎太郎は、高鳴る鼓動と一緒に、生唾をゴクリと飲み込んだ。
「そうだよ。パチンコ屋で聞いたんだよ。あそこんちは週末、草津に旅行だって、金持ちはいいね~、家には現金だけでも2・300はあるって噂だぜって聞いたんだよ。
だから、そんなおいしい情報見逃す手はないだろ?だからね、そしたら、なんだよ、家に人がいるもんだから、こっちがおどろいちまったよぉ」
「で、だ・・・誰に聞いたんだ?」
「え、金貸しの男だよ。名前は・・・」
「新島、メモ!」
「はい!」
「名前は、田山実。太田で貸金やってる男だよ」
タヤマ、なんだナカジマではないのか、なかなか終わらせてくれないな…と萩原は奥歯を噛みしめた。
「国定、なんでそんな大事なことをちゃんと言わないんだよ」と新島があきれながら言った。
「だって・・・聞かれなかったからさぁ」
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