Ⅲ 弁護士の直感+刑事の嗅覚 VS犯人の姦計 7-2

「ん?なんだよ、いないはずっていうのは?現にあの家には、高山夫婦がいたじゃないか?!」

新島が声を荒げる。

「ほら、そんな風にいつだって、刑事は…」

「国定…」萩原は、新島の肩を抑えながら言う。「国定、いいから、お前の言葉を続けろ」

「だから、じいさんとばあさんが、旅行に行くっていうから、俺はあの家に入ったんだよ!」

萩原慎太郎は、頭をガツンとやられた思いがした。

「なんで、そのことを取り調べで言わなかったんだ?」

新島が訊く。

「言ったさ、何度も言ったさ、でも、信じてくれなかったのはあんたらだろ?」


「くぅ・・・そうかぁ・・・」

しばしの沈黙の後、萩原はしぼるように言葉を吐いた。

萩原は、真犯人の尻尾に手を伸ばした気がした。

そして、呼吸を整えて国定に尋ねた。

「国定、そもそもどうして高山さんとこに入ろうと思ったんだ?誰かに、何かを・・・聞いたのか?」

萩原慎太郎は、高鳴る鼓動と一緒に、生唾をゴクリと飲み込んだ。

「そうだよ。パチンコ屋で聞いたんだよ。あそこんちは週末、草津に旅行だって、金持ちはいいね~、家には現金だけでも2・300はあるって噂だぜって聞いたんだよ。

だから、そんなおいしい情報見逃す手はないだろ?だからね、そしたら、なんだよ、家に人がいるもんだから、こっちがおどろいちまったよぉ」

「で、だ・・・誰に聞いたんだ?」

「え、金貸しの男だよ。名前は・・・」

「新島、メモ!」

「はい!」

「名前は、田山実。太田で貸金やってる男だよ」

タヤマ、なんだナカジマではないのか、なかなか終わらせてくれないな…と萩原は奥歯を噛みしめた。

「国定、なんでそんな大事なことをちゃんと言わないんだよ」と新島があきれながら言った。

「だって・・・聞かれなかったからさぁ」

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