Ⅰ 疑惑、そして、自白 1-2

「ほう、息子さんは一緒に暮らしているのかい?」

顔だけ警官の方に向け、歩みを止めずに萩原は尋ねた。

「いいえ、市内のアパートに。一人暮らしです。

『今朝方、電話をしたが、誰も電話に出なかったので不審に思い、家に来てみると裏口のドアが開いており、中で二人が血を流して死んでいた』とのことです」

裏口から家の中に入りながら、警官は簡単に説明した。

「あちらの男性です」

萩原と新島は、居間のソファーにうずもれるようにして腰掛けている男に近づいた。

居間は物盗りが荒らした後の、雑多な物で混乱をきわめている状態だった。

「息子さんですね?」

萩原がソファーの男に声をかけた。

「・・・あ、はい、そうです」

「県警の萩原です」

「新島です」

「この度は誠に大変なことになりまして、ご愁傷様です…」

萩原は目の前にいる男にまず悔やみを述べた。

その男は萩原とさほど年が変わらない風体だった。

男はどう答えてよいのかわからないといった感じで、何度か首を振ってから重く頭をたれた。

「高山さん…こんな時になんですが、少々、お聞きしたいことがあるのですが」と萩原が高山の頭に言葉を落とす。

「はい」

高山真彦は、萩原を見つめ返した。

「何かお心当たりはありますか?」と萩原は言ったものの、室内の荒らされた模様からして、単なる物盗りの犯行に思われた。

「さぁ・・・」

高山真彦は首をゆっくりと振る。

「そうですか。何か思い出したら、何でもよいので警察にお知らせください」

「はい」と高山真彦は小さな声で答えた。

これ以上真彦と話をしていても特に得られるものはないだろう、萩原慎太郎は新島と鑑識係の小渕のところへ向かった。

「やあ、萩さん、調子はどうだい?」

二人に気づいた小渕は、気さくに萩原に話しかけた。

0 件のコメント:

コメントを投稿