Ⅲ 弁護士の直感+刑事の嗅覚 VS犯人の姦計 6-2

「マーク・・・マーク・・・マーク・・・」

萩原は小声でつぶやいた。

「先生、マークってなんですかね?」

萩原慎太郎は、山中秀行の意見を求めた。

「さぁ、わたしにはさっぱり」

山中がそういうのを聞きながら、萩原は自分の手帳に『マーク』と書いた。

これが何かを意味していると確信したが、これが何を意味しているかは、皆目見当もつかなかった。

「マークゥ・・・か。なんなんだ、いったい」

「気になりますよね?」

山中が萩原の思考の邪魔にならないよう、小さな声で訊いた。

「ええ、そうですね」

「わたしもね、ついつい気になってしまいましてね、マーク、マークと家でもぶつぶつ言っていたみたいなんですよ」

「その気持ちはわかります」

「そしたら昨日、家に帰ったらハンバーガーが買ってありましてね」

「ん?ハンバーガー?・・・それで?」

「いやあ、わたしがマック、マックと言っていると思った娘が、わたしはマクドナルドが食べたいのかと勘違いして用意してくれてたんですよ、ハハハ。すみません、関係のない話で」

「いえいえ、なかなか微笑ましくていいではないですか」

マーク、マックと萩原は心の中でつぶやいた。

ダメだ、これだけじゃどうにもならない、と萩原は天を仰いだ。

「先生、もうすぐ始まりますね」

冒頭陳述が終わり、本格的な公判が、明日から始まろうとしていた。

「ええ、まあ、やりようはありませんが、やるしかないですからね。自白の信憑性に疑義があるという線で行こうかと。カインズホームのビデオを提出していますので。そこに国定はいなかったと主張していこうかと考えています」

「そうですか。取調官は誰が呼ばれるんですか?」

「ええと、確か轟という人です」

「マムシの轟かぁ、厄介ですね」

「知っているのですか?」

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