「・・・すいません。わかりません」
「あ~、やだやだ、いたよ、いたいた、こういう奴。子どもの頃、授業中指されるとわかりません、わかりません言ってる奴がな、国定よぉ、お前もそうだったろ?え?このうすらトンカチがぁ!」
「まあまぁ、渡辺、そうカリカリするなって、国定はな、ちょっとばかり思い出すのが得意じゃねえんだよ、な?国定よぉ?」
「は、はぁ・・・」と言いながら国定は小首をかしげつつうなずいた。
「国定、包丁はどこで買った。え?お前のな、コートの中にレシートが入ってたんだよ、え?3980円、文化包丁。え?お前のな、住んでるところの近くに行きつけの店かなんかはねえのか?え?あるだろ?ホームセンターとか」
「・・・ホームセンター?・・・カインズ?」
「そうだよ、な、思い出すもんだろ、え?カインズで買ったんだよ、お前は。で、いつ買ったか思い出したか?」
「・・・さぁ・・・」
「さぁってな、てめえな、こらぁ!!」
渡辺が机をバンバン叩いた。
「国定、思い出せ、え?何月だ、え?」
「・・・さ、」
国定はまた、さあと言うところだったが、言葉を飲み込んだ。
「そうだ、3月だよ、思い出してきたじゃねえか、え?何日だ?」
こうなりゃもうどうでもいいと思い、国定は適当に言った。
「・・・1日」
「う~ん、もうちょっと・・・」
「・・・2日」
「おお、思い出したじゃねえか、な、国定、お前はな、その気になってやればできる奴なんだよ、え?俺はね、初めっからそうだと思っていたんだよ、本当だとも」
「は、はぁ・・・」
「3月2日に凶器を購入し、翌3日午前2時頃高山彦三郎さん方に窃盗目的で押し入った。室内を物色中家人に見つかり、夫婦二人を護身用に用意した刃渡り30センチの包丁で刺して殺した」
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