Ⅰ 疑惑、そして、自白 5-3

「え?そんなんも忘れちまってるのか?おい?」

「・・・すいません。わかりません」

「あ~、やだやだ、いたよ、いたいた、こういう奴。子どもの頃、授業中指されるとわかりません、わかりません言ってる奴がな、国定よぉ、お前もそうだったろ?え?このうすらトンカチがぁ!」

「まあまぁ、渡辺、そうカリカリするなって、国定はな、ちょっとばかり思い出すのが得意じゃねえんだよ、な?国定よぉ?」

「は、はぁ・・・」と言いながら国定は小首をかしげつつうなずいた。

「国定、包丁はどこで買った。え?お前のな、コートの中にレシートが入ってたんだよ、え?3980円、文化包丁。え?お前のな、住んでるところの近くに行きつけの店かなんかはねえのか?え?あるだろ?ホームセンターとか」

「・・・ホームセンター?・・・カインズ?」

「そうだよ、な、思い出すもんだろ、え?カインズで買ったんだよ、お前は。で、いつ買ったか思い出したか?」

「・・・さぁ・・・」

「さぁってな、てめえな、こらぁ!!」

渡辺が机をバンバン叩いた。

「国定、思い出せ、え?何月だ、え?」

「・・・さ、」

国定はまた、さあと言うところだったが、言葉を飲み込んだ。

「そうだ、3月だよ、思い出してきたじゃねえか、え?何日だ?」

こうなりゃもうどうでもいいと思い、国定は適当に言った。

「・・・1日」

「う~ん、もうちょっと・・・」

「・・・2日」

「おお、思い出したじゃねえか、な、国定、お前はな、その気になってやればできる奴なんだよ、え?俺はね、初めっからそうだと思っていたんだよ、本当だとも」

「は、はぁ・・・」

「3月2日に凶器を購入し、翌3日午前2時頃高山彦三郎さん方に窃盗目的で押し入った。室内を物色中家人に見つかり、夫婦二人を護身用に用意した刃渡り30センチの包丁で刺して殺した」

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