Ⅱ 疑惑への疑惑 2-3

「あの日、俺は確かにあのうちに、高山さんの家に行きました」

「それは何時頃ですか?」

「2時頃です、夜中の」

「それで中に入った」

「はい」

「ピッキングの道具は、持参して行ったのですね」

「ええ、まあ、一応これが商売道具ですから・・・」

国定はなんら臆せずに言った。

「そして、調書では、室内を物色中に家人と出くわしたとありますが…」

「いえ、知りません。あってません」

「遭っていない?それでは国定さんは、この時どうしてたのですか?」

「あれはですね・・・」

国定徹は、目を左上の方向へ向けながら思い出すようにして話した。

「あれですね・・・目が慣れるまで部屋にいたんです。確かあの感じだと台所だと思うんですが、そしたら後ろの方からゴソゴソっと音がして、なんだよ誰かいるのかよ、って思った瞬間、頭をガツンとやられまして・・・

しばらく、うとうとした状態で、そしたら、なんだか先の部屋が慌ただしくなって、それでも俺の頭は、はっきりしてないんで、何か言い争ってた感じでもあるし、でも頭がズキズキしたんで・・・」と言いながら国定は後頭部を押さえた。

「それでは、国定さんの他に誰かがいたということですか?」

「そうです。それ以外には考えられないですよ」

そうは言われても、山中秀行の国定への猜疑の気持ちは揺るがなかった。

「それで、それから国定さんは、どうしましたか?」

「誰かに顔をピシャピシャ叩かれたような感じがして、目が覚めまして、急いでその場を離れたんです」

「それでは室内を物色したというのは?」

「そんなおっかないこと。もう、そりゃすぐに逃げましたよ」

「でも、30万円のお金は?」

「それが、不思議なもんで。ポケットの中にね、へぇ、入っていたんですよ。今さら返す訳にもいかねえから、まあ使っちまおうと思いましてね、へえ」

「はぁ、そうですか。それでは国定さんのアパートのベランダから出てきたコートですが?」

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