Ⅲ 弁護士の直感+刑事の嗅覚 VS犯人の姦計 7-4

「面識っていうか、いいお客だったからね。だから初めは俺も驚いたけどさぁ。でも、まぁそんなふうに悪いことしちゃう奴も中にはいるからね。いえいえ、俺は、そんなことしませんよ」

「それでどうなんだ?」

「どうなんだって言われても・・・まさか俺が仕向けたとか、そんなこと奴が言ってるんですか?」

「そうじゃないよ。パチンコ屋であんたと話をしてて、そんな話になったって言ってるだけだよ」

「パチンコ屋、パチンコ屋・・・ああ、そう言えば、というよりもあの人とは、よくパチンコ屋で会ってるからなぁ、でも、そんな話をしたような気もしないではないな」

「もうちょっと、思い出せないか?」

「へえ・・旅行とか、金持ちはいいね、とかそんな話はいつも世間話でしてるんで・・・これっていけませんか?」

「いやいや、そんなことはないさ」

新島は、どうします、萩原さんという目で萩原を見た。

「ありがとう。これで失礼するよ…」

萩原は確かに目の前の田山のことが気になった。

しかし同時に、コイツじゃないな、と感じた。

こいつは一枚噛んではいるが、こいつじゃないと萩原は思った。

「え?もう、いいんですか、アリバイとかいいんですかぁ?」

去ってゆく二人の刑事の背中に、田実は笑いながら言葉を投げつけた。


国定徹は、まんまとはめられたのか?

だとしたら誰に?

ナカジマという男にか?

今回の件で一番得をしたのは?

真彦が真犯人か?

真彦には動機はあり、アリバイはない。

しかし、そうではなくて、そもそも国定徹が迫真の演技で俺達全員を惑わせているのか?

国定にも動機はあり、アリバイはない・・・。

萩原慎太郎は、手が届きそうで届かない真犯人の背中を心の中で凝視した。

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