「面識っていうか、いいお客だったからね。だから初めは俺も驚いたけどさぁ。でも、まぁそんなふうに悪いことしちゃう奴も中にはいるからね。いえいえ、俺は、そんなことしませんよ」
「それでどうなんだ?」
「どうなんだって言われても・・・まさか俺が仕向けたとか、そんなこと奴が言ってるんですか?」
「そうじゃないよ。パチンコ屋であんたと話をしてて、そんな話になったって言ってるだけだよ」
「パチンコ屋、パチンコ屋・・・ああ、そう言えば、というよりもあの人とは、よくパチンコ屋で会ってるからなぁ、でも、そんな話をしたような気もしないではないな」
「もうちょっと、思い出せないか?」
「へえ・・旅行とか、金持ちはいいね、とかそんな話はいつも世間話でしてるんで・・・これっていけませんか?」
「いやいや、そんなことはないさ」
新島は、どうします、萩原さんという目で萩原を見た。
「ありがとう。これで失礼するよ…」
萩原は確かに目の前の田山のことが気になった。
しかし同時に、コイツじゃないな、と感じた。
こいつは一枚噛んではいるが、こいつじゃないと萩原は思った。
「え?もう、いいんですか、アリバイとかいいんですかぁ?」
去ってゆく二人の刑事の背中に、田実は笑いながら言葉を投げつけた。
国定徹は、まんまとはめられたのか?
だとしたら誰に?
ナカジマという男にか?
今回の件で一番得をしたのは?
真彦が真犯人か?
真彦には動機はあり、アリバイはない。
しかし、そうではなくて、そもそも国定徹が迫真の演技で俺達全員を惑わせているのか?
国定にも動機はあり、アリバイはない・・・。
萩原慎太郎は、手が届きそうで届かない真犯人の背中を心の中で凝視した。
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