Ⅲ 弁護士の直感+刑事の嗅覚 VS犯人の姦計 5-2

「ばあさんが・・・『お父さん、どうしたのですか?』って」

「なるほど・・・他には何か?」

「ええ、それから少し間があって・・・こんな感じで『なに、あなたたちは』って」

「それから?」

あなたたち、ということは複数だな、と山中は感じながらメモを取った。

「それから・・・『なにやっているの?』みたいな感じのことをばあさんが言って」

「他にはまだありますか?」

「そう、最後に何か言ったんだよ・・・なんだっけなぁ~」

「国定さん、頑張って思い出して。1つ1つが大切なことなのですから!」

「そうなんだけどさぁ、それをずっと思い出そうとしてたんだけど・・・

あ、そうだ『あ、マーク・・・』ってマークって言ったんだよ、ばあさんがマークって言ったから、なんか変な感じがしたのをうっすらだけど覚えてる」

「『マーク』・・・ですか」

山中はマークと手帳に書き、それを丸で囲んだ。


山中は仕事を終えてからも、『マーク』という言葉が気になっていた。

時々口に出してつぶやいたり、マークとつくものを考えだせる限り頭の中であげてみたりしていた。

ベルマーク、初心者マーク、若葉マーク、落ち葉マーク、ランドマーク、スカイマーク、ベンチマーク・・・。

しかし、そのどれも、年寄りの女性が最後に言うにはふさわしくない言葉に思えた。

そうか、何かのマークを見たのかもしれないな、と山中は思った。

そのような感じで2・3日を過ごした後、山中が家に帰ってみると、義母の恵子が娘たちとおしゃべりをしていた。

「あぁ、お義母さんいらっしゃい」

「秀行さん、おかえりなさい。はいこれハンバーガー」

「え?どうもごちそうさまです。お義母さんがハンバーガーなんてお買いになるなんて珍しいですね」

山中はモスバーガーの袋を開けた。

「ええ、加代ちゃんがね、お父さんが食べたがっているって、ねえ?」

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