「ばあさんが・・・『お父さん、どうしたのですか?』って」
「なるほど・・・他には何か?」
「ええ、それから少し間があって・・・こんな感じで『なに、あなたたちは』って」
「それから?」
あなたたち、ということは複数だな、と山中は感じながらメモを取った。
「それから・・・『なにやっているの?』みたいな感じのことをばあさんが言って」
「他にはまだありますか?」
「そう、最後に何か言ったんだよ・・・なんだっけなぁ~」
「国定さん、頑張って思い出して。1つ1つが大切なことなのですから!」
「そうなんだけどさぁ、それをずっと思い出そうとしてたんだけど・・・
あ、そうだ『あ、マーク・・・』ってマークって言ったんだよ、ばあさんがマークって言ったから、なんか変な感じがしたのをうっすらだけど覚えてる」
「『マーク』・・・ですか」
山中はマークと手帳に書き、それを丸で囲んだ。
山中は仕事を終えてからも、『マーク』という言葉が気になっていた。
時々口に出してつぶやいたり、マークとつくものを考えだせる限り頭の中であげてみたりしていた。
ベルマーク、初心者マーク、若葉マーク、落ち葉マーク、ランドマーク、スカイマーク、ベンチマーク・・・。
しかし、そのどれも、年寄りの女性が最後に言うにはふさわしくない言葉に思えた。
そうか、何かのマークを見たのかもしれないな、と山中は思った。
そのような感じで2・3日を過ごした後、山中が家に帰ってみると、義母の恵子が娘たちとおしゃべりをしていた。
「あぁ、お義母さんいらっしゃい」
「秀行さん、おかえりなさい。はいこれハンバーガー」
「え?どうもごちそうさまです。お義母さんがハンバーガーなんてお買いになるなんて珍しいですね」
山中はモスバーガーの袋を開けた。
「ええ、加代ちゃんがね、お父さんが食べたがっているって、ねえ?」
0 件のコメント:
コメントを投稿