「そうだよ。人間誰だって思い違いくらいするさ、え?だからさ、よおく思い出さなきゃいけねえぜ、え?国定よぉ」
「はあ、でも、俺にはそんなこと・・・そんなことした覚えもないし・・・」
「いや、国定よぉ、思い出すんだよ、な、お前さんの指紋のついた包丁があった。ということはお前さんの手には包丁があったんだよ、え?いいかい」
「は、はぁ・・・」
「いいか国定、頭ん中の記憶だけじゃなくてな、こうな、手に残った、こう包丁の感触だよ、それをな、思い出すんだよ」
国定は朦朧とした意識の中で言われた通りに包丁の記憶を、包丁の感触を頭に思い浮かべた。
「・・・あぁ、包丁の感触・・・」
「どうだい、思い出したろ?」
「あ、はい、包丁・・・感触・・・確かに」
「な、そうなんだよ、よおく思い出せ、頭ん中でな、こうな、お前は包丁を握りしめている。そうだよな?」
国定は轟の言葉に吸い寄せられるかのようにうなずいた。
「そうだ、それでお前の前に人がきた。しまった、これじゃ捕まるかもしれねえ、それでお前はその持ってた包丁で・・・」
「・・・刺した・・・」
国定はなにかに憑かれたかのように轟の後を続けた。
「ふ~、そうだな、お前はやむなく、とっさに高山さん夫婦を刺した。そうだな?」
国定の頭の中で自分が高山さん夫婦を包丁で刺している鮮明なシーンが流れた。
「・・・はい、俺が刺してます・・・刺しました・・・」
国定はぐったりしながらつぶやいた。
「で、それからな、凶器の包丁はいつどこで買ったんだ?」
渡辺が国定に尋問した。
「へ?いつ、どこで?」
「おい、国定さっさと答えろよ」
「・・・わかりません」
「・・・。お前なぁ、おい、こらよぉ、なんでそんなことくらい答えられねえんだよ、ったくよぉ」
渡辺は国定のことを本気でぶん殴りたくなった。
0 件のコメント:
コメントを投稿