Ⅳ 無知の暴露/真実の暴露 2-6

高山夫婦の寝室へ駆け戻ると、萩原慎太郎は震える手を伸ばし、ドストエフスキーの『罪と罰』を手に取った。

そして、しおりで閉じられているページを、ゆっくりと開くと…。

無言で立ち上がった萩原の後を追い、新島は目を見開いて本を見つめている萩原に声をかけた。

「は、萩原さん、何か、何か見つけたんですか?」

「新島・・・見つけたかもしれない」

ページの余白にはこう書かれていた。

『3/2 真彦・電話 あいつがどうのとうわ言のように言う 元気がなさそうだったと良子』

これだ、ここに何かがあるはずだ、いや、なくては困る、と思いながら萩原はページを前に繰っていった。

ところどころに日付とメモが書かれていた。

そして、2月13日がその本の最初のページに書かれた日付だった。

萩原は表紙を見て、新島に叫んだ。

「新島!一巻だ!『罪と罰』の一巻、持ってこい!」

「あ、はい」

新島は本棚から岩波文庫のドストエフスキー『罪と罰』第一巻を抜き取り、萩原に手渡した。

そこには果たして萩原の予想通りのものが書かれていた。

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