そして、しおりで閉じられているページを、ゆっくりと開くと…。
無言で立ち上がった萩原の後を追い、新島は目を見開いて本を見つめている萩原に声をかけた。
「は、萩原さん、何か、何か見つけたんですか?」
「新島・・・見つけたかもしれない」
ページの余白にはこう書かれていた。
『3/2 真彦・電話 あいつがどうのとうわ言のように言う 元気がなさそうだったと良子』
これだ、ここに何かがあるはずだ、いや、なくては困る、と思いながら萩原はページを前に繰っていった。
ところどころに日付とメモが書かれていた。
そして、2月13日がその本の最初のページに書かれた日付だった。
萩原は表紙を見て、新島に叫んだ。
「新島!一巻だ!『罪と罰』の一巻、持ってこい!」
「あ、はい」
新島は本棚から岩波文庫のドストエフスキー『罪と罰』第一巻を抜き取り、萩原に手渡した。
そこには果たして萩原の予想通りのものが書かれていた。
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