そして、それをプリントアウトさせ、何度も読み返した。
出てきたな、中島、と思いながら萩原は『中島』のところを丸く囲った。
萩原は新島を伴い、その複写と原本のコピーを持って、弁護士山中秀行のもとを訪れた。
「山中先生、やはり『中島』が出てきました」
萩原慎太郎は、山中が一通り読み終わってから口を開いた。
「そのようですね。でも、これでは真彦さんは捕まえられないでしょう?」
山中は顔を上げながら、萩原に言う。
「多分・・・」
「でも、別件か何かで…」
新島がそう言うのを、萩原は首を振って遮った。
「まあ、無理だろ・・・一応、今度の証人喚問の役に立つかと思いまして」と、萩原は山中に言った。
「はい、ありがとうございます」
「いえいえ、始まりは先生でしたから、こちらもなんとか報いないと・・・」
「いえ、あれはわたしというより美幸君のお手柄ですから」と、山中はちょうどお茶を淹れなおしてきた森井に向ってほほ笑んだ。
「いえ、そんな・・・」
森井は少しうつむいた。
「そうだったんですか。森井さんはなかなかの観察眼ですね。他には何かピンときたりしませんか?」
新島が感心したとういう口調で言った。
「た、たまたまですから・・・でも、犯人はそこまで考えてはいなかったんじゃないですかね?」
「そこまでとは?」
萩原が訊く。
「え、あのう、たまたまコートのサイズに気づいて、それでここまで来た訳ですから。もし用意周到な犯人でしたらコートのサイズまできっちり合わせたでしょうし、なにかしら、どこかで犯人の手落ちとかがあるような気がするんですけど・・・」
「そうですよ。どこかに必ずありますよ。作為的に人間が起こした事件を人間が解けないことはないですからね」
山中秀行は、森井美幸の後に続いて言った。
「そうですね、そうだといいのですけどね」
新島が大きくうなずきながら相づちを打った。
萩原慎太郎は、皆の会話を聞きながら、まだどこかにあると思われる確たる証拠を求めて暗闇の中を模索していた。
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