Ⅲ 弁護士の直感+刑事の嗅覚 VS犯人の姦計 3-2

「まあ、あの真彦ってのは、昔から金にしまりがないっていうのか、だらしがないっていうのか、そりゃまあ昔っから、彦さんと良子ちゃんの手を焼かせてましてね」

「なるほど」

「ええ、そうなんですよ。ここんところ顔見せてなかったんですがね。まあた、去年の暮れからやってきて、まあなんていうんですか、そのお金をね・・・」

「金の普請に?」

「そうなんですよ。それで金額もそりゃ何千万の単位でってから、わたしゃ驚いちゃいましてね、まあ、良子ちゃんとこはお金もある家ですから、出せないことはないのでしょうけど。彦さんがダメだ、ダメだ。出したらあいつのためにならないから、ここは我慢しなくちゃダメだよ。って、ちょっとね、いざこざがあったとかなかったとかでね、はい、でもまあ、犯人がすぐに捕まってよかったですけどねぇ」

「そんなことが・・・」

「あの、刑事さん、くれぐれもわたしが言ったってのは・・・」

「わかっています。貴重なお話ありがとうございました」

萩原と新島は、頭を下げて女性宅を辞した。


公園に止めた車に戻る途中、萩原は自販機で冷えた缶コーヒーを2本買い、公園のベンチに腰掛け1本を新島に渡した。

「いつもありがとうございます」と新島はうれしそうに言った。

「なあに、出世払いだよ。偉くなって3倍にして返してくれよ」

萩原は初夏の陽射しが照りつける午後の公園で、先ほどの女性とのやりとりを反芻していた。

資産家の高山夫婦が死んで一番得をするのは?

いや、一番得をしたのは誰だ?

やはり・・・息子の真彦か?

真彦だとしたら・・・動機は?

金には困っていたようだけど。

それなら遺産目的の殺害か?

だとしたら動機はある。

アリバイは?

一度訊いてみないとな・・・萩原は缶コーヒーを飲み終えると、ベンチから立ち上がってゴミ箱に空き缶を投げ入れた。

そして新島も萩原の後ろから続いた。

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