「いや、お前なら思い出すさ。お前はあの日あの時、高山さんとこにいた。お前のいたその時間に高山さん夫婦は何者かによって殺された。その現場にはお前の指紋がついた凶器が、包丁が残されていた。そして、お前のアパートのベランダから被害者の血がついた黒のビニールレザーのコートが出てきた・・・国定、何か思い出したかい?思い出すだろ?な?お前がやったんだから思い出せ、思い出せ」
「だから・・・知らねえって・・・」
「いや~、まだだ、まだだよ、国定よ、ちゃんとだよ、ちゃんと思い出さなきゃいけねえよ、な?わかるかい?だってお前はあの日現場にいたんだろ、え?そうなんだろ」
「・・・だから・・・そこにはいたけど・・・いたけど殺しちゃいねえよぉ」
「殺してねえのに、なんだってあの夫婦は死んでるんだよ、え?こりゃどういうことだい、え?国定よぉ」
「・・・だから、知らねえって・・・何度も言ってるだろ?俺は、その時誰かに頭を殴られたかなんかして記憶がないんだよ・・・」
「くにさだぁ!誰がそんな嘘を信じるっていうんだよ、こらぁ!」
渡辺が国定の胸倉を掴み、大きく揺さぶった。
「え?国定よぉ!なんだぁ、お前が盗みに入って、それから誰かに頭を殴られただとぉ、え?それで殺したのはそいつだって、言いてえのか?おい!」
「・・・だってよぉ、それはわからねえがよぉ、俺じゃねえんだよ・・・盗みに入ったのは認めるよ。でもね、刑事さん、誰かに頭を殴られて、気がついたら物音がしてたから、しばらくじっとして、それから慌てて逃げたんだよ、本当だよ、これは本当なんだよ、なあ、刑事さん信じてくれよ。俺はやってねえんだよ」
「はぁ~?国定よ・・・」
渡辺は国定の後ろに回り込み、国定の肩を強く掴んだ。
「だったらなぁ、あの金はなんなんだよ、え?お前な、お前が持ってた金な、わかってるだろ?え?言ってみろよ。言ってみろって!」
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