Ⅱ 疑惑への疑惑 7-2

「そうなんだよ。小柄な国定さんは、どう考えてみたって、サイズはSかMだよ。いくらなんでもLLを買うことはない。そうだろう?」

「そ、そうですよ。いくらなんでも大きすぎますよ」

山中秀行は、受話器を取り、警察に電話をした。

コートのサイズが間違っていないか確認を取ったが、やはりコートのサイズはLLで、間違いなかった。

大いなる矛盾点をひとつ見つけたのだ。

そして、電話を切る前に、担当していた刑事と連絡を取りたい旨を伝えた。

山中秀行は、いささか興奮気味に室内を歩き回った。

そして、机の上の証拠物―包丁、ゴム手袋、コートを横目で見ながら、机の周りをグルグルと回った。

「ん?そうか・・・どうしてだ?」

「どうかしましたか?」

森井が尋ねる。

「ゴム手袋・・・どうしてないんだ・・・」

「あ、それ、さっきわたしが・・・」

「違うよ、違う、違う。どうして現場にゴム手袋が、片方しか、残されていないんだぁ」

ゴム手袋を手にはめながら、山中秀行は森井美幸に言う。

「これって、ゴム手袋って、よくわからないけど、滑り止めにもなるよね?」

「そうですね」

「ならば、そうならばだよ・・・どうして国定は、ゴム手袋を片方だけ取る必要があったんだ?」

その時、事務所の電話が鳴り響いた。

高山夫婦殺害事件の担当だった萩原慎太郎だった。

山中は森井と電話を替わった。

「もしもし、お忙しいところ恐れ入ります。国定徹の弁護人の山中秀行です」

「国選の先生ですよね、うかがっております。萩原です。無罪を主張しているんですよね?何か見つかりましたか?」

萩原の馬鹿にした口ぶりに山中はいささかムッとしたが、つとめて何でもないような素振りで、山中は話を切り出した。

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