Ⅰ 疑惑、そして、自白 4-1

3月6日。太田警察署、第一取調室。取り調べ3日目。

3月3日未明に起きた高山夫婦強盗致死事件の取り調べが始まって3日目に入っていた。

被疑者の国定徹は、殺人容疑を否認し続けていたものの、連日の長時間に及ぶ取り調べに疲れきっていた。

しかし、自分の置かれた不利な立場を自覚できるだけの分別はまだ残っていた。

「国定さ~ん、わかりますか~?聞こえますか~?なんであなたのうちのベランダから被害者の血のついたコートがでてきたんですか~?」

渡辺が馬鹿にした口調で国定に向って言ったが、国定は眠そうにうつむいているだけだった。

「おい!こっちが真面目に仕事してるっていうのに、おい、こらぁくにさだぁ!起きろって、起きろってばよぉ!」

渡辺は国定の座っている椅子を思い切り蹴り上げた。

「ぁ、ああ・・・」

国定は意味不明なうめき声をあげた。

「なあ、国定!コートはなんなんだ?なんでコートがあるんだよ?え?どうなんだよ?答えろって、え?」

「・・・だから・・・コートなんて・・・おれは、しらねえって・・・いってるじゃないですかぁ」

「またまた、知らぬ、存ぜぬですか?国定さんよぉ、知らねえことがあるかよ、え?お前んちだよ、お前んちのアパートのベランダから血のついたコートが出てきたんだよ。それを知らねえとはな、俺はなんて言っていいんだよ、え?国定よぉ、もうちっとわかるように説明してくんねえか?え?」

「・・・だから、知らねえもんは知らねえよぉ・・・」

「知らねえ、知らねえ、ってな。お前はそれしか言えねえのか?え?おいどうなんだよ、こらぁ!」

いきり立つ渡辺を制しながら、轟が席につく。

「なあ、国定よぉ、お前さんはなぁ、違うんだよ、わかるかい?え?」

「?」

「お前さんはな、人よりちょいとばかし思い出すのが遅いだけなんだよな、え?そうだろ?知らねえんじゃねえんだよな?え?思い出すのがちょいと人よりかかるから、それを馬鹿にされるのが嫌で、知らねえなんて言ってんだよ、うん、そうだ。お前はな、知らねえことなんかないよ、うん、お前は全部知っている、なあ、だから話そうな、全部話そうな」

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