「いえいえ、そんな青年実業家だなんて。まあ、借金もそりゃあね、何せ事業ですからね、2000万くらいですか、ありましたよ」
「ほ~、でもそれだけ借金ができるってのも大したもんですよ。わたしなんかの安月給じゃ、そんな借金すること自体無理ですもん」
新島は調子を合わせた。
「いやいや、まあでもなんていうんですか、不幸中の幸いとでもいうんですかね。親父たちの保険金が下りたんで、いやあ~助かりましたよ・・・」
真彦は萩原の視線を感じて、自分が少し喋りすぎているのに気づいた。
「で、用事ってなんですか?」
高山真彦は、新島ではなく萩原慎太郎の目を見据えた。
「事件の前に、ご両親と揉め事などはありませんでしたか?」
「揉め事?家庭の事情を答える必要などあるんですか?警察は民事不介入でしょ?答えるのは義務ですか?」
萩原も新島も、真彦のガードが急に堅くなったのを悟った。
「義務ではありません。ただそのようなことを小耳に挟んだので・・・それでは、あなたは事件があった時、どこにいましたか?」
萩原は、高山真彦の表情の変化を見逃すまいと意識を集中させる。
「どこって、いやだなぁ~俺を疑っているんですか?その日は家にいましたよ。ここで寝てました。証人はいませんよ。一人もんですから。それじゃダメですか?」
「いや、そういうんじゃないですから・・・一応みなさんにお聞きしていることですので・・・」
新島が真彦をなだめた。
「でも、だいたい、もう犯人は捕まったんですよね?違うんですか?」
高山真彦は、挑むような視線を萩原にぶつけた。
「えぇ、その通りですよ。99・9%国定徹の犯行で決まりですよ」
萩原慎太郎が残念そうな表情でそう言うと、真彦は、無意識のうちに安堵感を漂わせた。
「刑事さん、もしなんだったら、今実家に姉貴がいるから話でもしていったら?まあ、犯人はもう捕まってるというのに、おたくらが何をしたいのかはわからないけどさぁ、参考になるかもよ、フフフ」
高山真彦は、不敵な笑みを浮かべた。
「そうですか、それは助かります。あ、あと最後にひとつよろしいですか?」
萩原慎太郎は、高山真彦に訊く。
「ナカジマという男をご存知でないですか?」
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