「はい。国定徹、37歳。前科2犯。いずれも窃盗です。
ギャンブル、特にパチンコが好きで、金がなくなると昼間に空き巣をして稼いでいたと自供しています。
性格は気弱で、おとなしく、嫌とは言えない性格だったとのことです。まあ、それで殺せって言われて、人殺しができるほどの大胆さはないでしょうけど。国定に限らず普通はそうでしょうけどね」
「まぁ普通はな・・・普通は?・・・」
萩原慎太郎の嗅覚が、何かを感じ取って鋭敏に探り始めた。
「普通は・・・普通は、か?・・・この事件、最初からなにか不自然な臭いがしてたんだよ。普通じゃない何かがあるんだよ・・・なんだ新島?」
「さあ、それがわかったら解決なんでしょうけどね」
「国定は普段、普通は・・・新島!山中先生のメモをみてくれ」
「あ、はい」
「国定はコートなんか着ないとか言ってなかったか?それで普段は・・・」
「はい・・・ああ、ありました・・・普段は昼間、作業服とかスーツを着て空き巣に入っている。しかし、当日は普段着・・・ってメモにありますね」
「そうだ普段の国定は昼間、作業服やスーツで盗みに入っていた。なぜだ新島?」
「なぜって、その方が目立たないからですよ。作業服で住宅街をうろうろしてても、不審に思われませんからね。
チャイム押して、中から人が出てくれば適当に言い繕ってごまかせばいいですし、いなければそのまま空き巣に入る、ってことでしょうね」
萩原の思考回路が、うなりをあげて機能し始めた。
「違う、なぜだ?なぜ昼間なんだ?」
「まあ、昼間の方が仕事だの、買い物だのと家に人がいない確率が高いですし、いたとしても、さっきみたいにごまかせますから」
「そうだ、なぜ空き巣は夜じゃないんだ?」
「夜なら空き巣じゃなくて強盗ですよ」
「どうして?」
「どうしてって、家人がいれば強盗じゃないですか?」
「そうだ、だからどうして、今度に限って国定は昼間じゃなくて夜に入ったんだ・・・そこだよ、普段はこそこそ空き巣に入ってた奴が、なんで強盗に入ったんだ?」
「さあ、なんでって言われても、それは本人しか知らないことですからね」
「そうか、そうだったのか・・・そもそも、なぜ窃盗の常習犯の国定徹が、高山宅に強盗に押し入ったのか、そこが不自然だったのか・・・」
萩原は椅子から飛び上がり、真意をただすため、国定のもとへ急いだ。
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