「有名ですよ。一度喰らいついたら、テコでも離れないって。どんな奴でも1週間あれば大抵は落ちるって評判の取調官ですよ。人間的にもなかなか老獪なやり手ですよ」
「マムシの轟ですか・・・フフフ」
「ん?なにか?」
「いえね、国定さんの子ども時代のあだ名、ご存知ですか?」
「いえ、知りません」
「実はね、カエル、なんですよ」
「ハハ、ヘビにカエルですか、笑うに笑えませんけど、フフフ。いや、すみません。それじゃ取り調べの時も、蛇に睨まれたカエルは一コロだったんでしょうね」
「そうですね」
実際にそうだったのだろうなと、山中秀行は苦笑いしながら思った。
警察署に戻った萩原慎太郎は、事件の概要が書いてあるホワイトボードに『マーク』と新たに書き加えた。
そして、捜査資料をもう一度丹念に新島と読み返した。
しかし、萩原の頭には『マーク』の3文字がこびりついていた。
「・・・マーク・・・」
萩原は何度もそうつぶやいた。
「新島、なんか喋れ」
萩原慎太郎は、隣で捜査資料を読み耽っている新島に言った。
「え?あ、はい。えっとですね・・・最近、忙しくて彼女に振られそうで・・・どうしたらいいですかね?」
「バカ、お前の身の上話じゃなくて、事件の話に決まってるだろ?」
「あ、すいません・・・えっと、プロファイリングみたいなものですね。
犯人はおそらく二人。殺した方は慣れていますね。傷口にためらった跡が見られない。二人とも致命傷の傷ですが、必要以上には刺されてはいない。とうことは怨恨の線ではない。
室内は荒らされていますが、財布や財布に入った現金、通帳及び印鑑の類は残っている。これは不思議ですが、まあ気づかれたので、殺害後急いで逃げたということでしょう。
犯行時刻は午前2時から3時の間。騒がれる前に殺したとみえて、近所の人たちは不審な物音を聞いたといった情報はありせん。
現場に残されていたのは血のついた包丁、ゴム手袋。これらからは国定徹の指紋が検出されています」
「残っていたのは国定徹ばかりか・・・それじゃ次に国定のプロファイルしてくれ」
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