Ⅲ 弁護士の直感+刑事の嗅覚 VS犯人の姦計 3-3

「いや~、いいですね、暢気にお昼寝ですよ」

少し離れたベンチで横になっているホームレスの男を見ながら、新島は小声で萩原に言った。

「そうでもないだろ。ホームレスだってそうそう楽ではないよ」

萩原は笑いながら新島に言う。

「萩原さん、経験者ですか?」

「まあな、昔ちょっと・・・ん?」

何かが気になった萩原は、スタスタとそのホームレスに向って歩いて行った。

「こんちは」

萩原はホームレスの男に話しかけた。

「ん?・・・」その男は眠たそうで、迷惑そうな目を向けた。

「ちょっと聞きたいんだけどね」

「警察?」

「よくわかるね」

「俺みたいな奴に気安く話しかけるのは、警察か偽善者くらいですよ」

「ははは」

新島は声に出して笑った。

「そうだな」萩原も苦笑いする。

「で、なんですか?ここから出て行けって?」

「いや、そうじゃないよ。本当はそんな必要もあるかもしれないが、それは俺たちの仕事じゃない」

「だったらなんですか?」

「3月の初めに、この近くで殺人事件があったの知ってるかい?」

「あぁ~あれか、うんうん、朝からパトカーのサイレンがやたらとうるさかったなぁ。後で図書館で新聞読んだら載ってたし、その後もテレビやなんかが来てたでしょ?」

「ああ、それだよ。その時ね、その日でも前でも後でも構わないんだがね、何か変わったこととか、おかしな奴とか見かけなかったかい?」

「・・・う~ん、あの日にね、どうだかなぁ~・・・う~ん・・・」

「そうか、ありがとう」と、萩原たちが立ち去ろうとすると、何かを思い出したかのように、その男があっという声を立てた。

その「あっ」という声に、萩原たちは振り返る。

「刑事さん!思い出したよ」

ホームレスの男は大きな声で二人を呼び止めた。

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