「お、ナイス・シュート・・・」
新島が小声で言った。
萩原は両手を頭の後ろで組みながら天井を見上げた。
何かが、どこかで囁いている、なんだ?どこだ?
萩原は頭の中で、今まで何度も繰り返した事件の再現をまた行った。
俺たちが再び首を突っ込むことになったのはどうしてだ?
コートだ、コートだったな・・・コートがきっかけか。
コートがきっかけならコートが答えを出して終わらせてくれよ、と萩原はコートを手に取った。
「新島?」
「あ、はい?」
「山中先生の所で事務員の森井さんとコートの話をしてたよな?」
「あ、はい。犯人がそこまで細かく考えているなら、コートのサイズも被告人の体に合わせていただろう、ってそんな話でしたね」
やはり、コートか・・・と萩原は思った。
「新島、もう一度、犯人のプロファイルだ。ホームレスのナカジマが聞いたのは?」
「二人の話声と、おそらく二人が手や服に着いた血を洗い流す音でしょう」
萩原は薄く目を閉じながら、あの日の深夜、公園のトイレでの二人をイメージした。
「その時、中島は、コートは着ていたか?」
「・・・着ていません。もうその時は、あらかじめ用意したゴミ袋に入れているでしょう。その後、血を洗い流したものと思います」
「・・・同感だな。それから?」
「それから、ゴミ袋を車に乗せ、その場を去った」
「うん」
「そして、国定の自宅に家宅捜索が入るのを見越して、ベランダにその袋を投げ入れた」と、新島は何かを投げるジェスチャーをした。
「いつ投げ入れた?」
「事件当日、起きだした国定が出かけた後、夕方頃までに。それ以上遅い時間ですと、警察がもう動いている可能性がありますから」
「うん・・・」
萩原も新島と同じように、ゴミ袋を投げ入れるジェスチャーをした。
そして、その自分の指先を見て、手が止まった。
「・・・ん?・・・そうか。もしかしたら、いけるかもしれないぞ。新島、指紋だ!指紋を調べろ」
「はい?」
「指紋だよ、コートだよ」
萩原は興奮気味にまくしたてた。
「萩原さん、コートからは指紋は検出されてませんよ」
「違うよ、コートの・・・」
萩原はそういうと大至急、鑑識に回した。
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