事件の第一発見者は高山真彦だった。
しかし、ここではないと萩原は思い、真彦に礼を言いその場を離れた。
萩原たちは車を走らせ、次に国定のアパートへ行った。
アパートの管理人が、至極迷惑そうな顔で萩原たちを迎えた。
「お手数かけます」
新島が萩原の代わりに管理人に弁解した。
「お手数はいいんですがね。もうぉ、こんな事件が起きると困っちゃいますよ」
そう言いながら管理人は鍵を開けた。
「はぁ、そうですよね」と新島は答えた。
萩原たちは、整理整頓が細部までなされた、生活感の乏しい国定徹の部屋に入った。
「ずいぶん片付いてますね?大家さんが片付けたんですか?」
新島が尋ねた。
「いえいえ、もともと荷物の少ない人だったみたいで。特に何もしてませんよ。だってね、あんなことがあればね、ほとぼりが冷めるまでほっとくしかないですよ、はぁ、出るのは溜息ばかりですよ」
「それは、なんとも・・・」
大家の相手は新島に任せ、萩原は室内を見て回った。
粉雪のような埃が、うっすらと部屋全体をおおっていたが、実に整然とした部屋だ。
典型的な前科者の部屋だな、と萩原は思った。
刑務所に入ると整理整頓が厳しく、チリひとつ残っているだけで何度も掃除のやり直しをさせられる。
ムショ暮らしをするとそこからシャバに出ても、その過去の習慣で嫌でも整頓せざるをえなくなるほどのものだ。
萩原はそんな国定徹の部屋を見て回った。
ゴミ箱にもゴミひとつなかった。
ゴミ箱にもゴミが・・・?。
萩原の中で何かがざわついた。
「大家さん」
萩原慎太郎は、大家の方に向きなおった。
「はい?」
「大家さん、何も手をつけてないと言いましたよね?」
「ええ、何も」
「でも、ゴミくらいは捨てましたよね?ゴミ箱にゴミがないんですよ。生ゴミも何も」
「え?ゴミ、ゴミ、ゴミ・・・覚えてないなぁ~捨てた覚えはないんだけどなぁ~」
「それじゃ誰が?」
「萩原さん、それは国定が捨てたんでしょ?」
萩原が考え込む前に新島が言う。
「ああ、そうですよ。この刑事さんの言う通りですよ、流石ですねぇ、刑事さん・・・」
萩原慎太郎は、黙考した。
それだと駄目だ、それでは何かがおかしいんだ…。
そして、得体の知れない何かが、萩原の思考をガツンと突き上げた。
「新島!国定が逮捕されたのは何曜日だ?」
萩原が叫ぶ。
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