Ⅲ 弁護士の直感+刑事の嗅覚 VS犯人の姦計 2-2

事件の第一発見者は高山真彦だった。

しかし、ここではないと萩原は思い、真彦に礼を言いその場を離れた。

萩原たちは車を走らせ、次に国定のアパートへ行った。

アパートの管理人が、至極迷惑そうな顔で萩原たちを迎えた。

「お手数かけます」

新島が萩原の代わりに管理人に弁解した。

「お手数はいいんですがね。もうぉ、こんな事件が起きると困っちゃいますよ」

そう言いながら管理人は鍵を開けた。

「はぁ、そうですよね」と新島は答えた。

萩原たちは、整理整頓が細部までなされた、生活感の乏しい国定徹の部屋に入った。

「ずいぶん片付いてますね?大家さんが片付けたんですか?」

新島が尋ねた。

「いえいえ、もともと荷物の少ない人だったみたいで。特に何もしてませんよ。だってね、あんなことがあればね、ほとぼりが冷めるまでほっとくしかないですよ、はぁ、出るのは溜息ばかりですよ」

「それは、なんとも・・・」

大家の相手は新島に任せ、萩原は室内を見て回った。

粉雪のような埃が、うっすらと部屋全体をおおっていたが、実に整然とした部屋だ。

典型的な前科者の部屋だな、と萩原は思った。

刑務所に入ると整理整頓が厳しく、チリひとつ残っているだけで何度も掃除のやり直しをさせられる。

ムショ暮らしをするとそこからシャバに出ても、その過去の習慣で嫌でも整頓せざるをえなくなるほどのものだ。

萩原はそんな国定徹の部屋を見て回った。

ゴミ箱にもゴミひとつなかった。

ゴミ箱にもゴミが・・・?。

萩原の中で何かがざわついた。

「大家さん」

萩原慎太郎は、大家の方に向きなおった。

「はい?」

「大家さん、何も手をつけてないと言いましたよね?」

「ええ、何も」

「でも、ゴミくらいは捨てましたよね?ゴミ箱にゴミがないんですよ。生ゴミも何も」

「え?ゴミ、ゴミ、ゴミ・・・覚えてないなぁ~捨てた覚えはないんだけどなぁ~」

「それじゃ誰が?」

「萩原さん、それは国定が捨てたんでしょ?」

萩原が考え込む前に新島が言う。

「ああ、そうですよ。この刑事さんの言う通りですよ、流石ですねぇ、刑事さん・・・」

萩原慎太郎は、黙考した。

それだと駄目だ、それでは何かがおかしいんだ…。

そして、得体の知れない何かが、萩原の思考をガツンと突き上げた。

「新島!国定が逮捕されたのは何曜日だ?」

萩原が叫ぶ。

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