萩原たちも、日本の国家権力の組織の一員であったので、なんとも答えようがなかった。
「『疑わしきは被告人の有利に』とは言葉ばっかりですよ・・・いや~、すみません、こんな愚痴ばっかりで」
「いえいえ・・・。先生、次回の証人は?」
新島は話題を変えた。
「次回は、遺族であり、第一発見者である高山真彦さんです」
「そうですか・・・」
「無理矢理になりそうですが、わたしも何か尋問で引き出してみるつもりです」
「はい、期待してます」
新島は言った。
しかし、それでも何か、真彦を追い込めるだけの材料がなければ、それも徒労に終わるだろう、と萩原は思った。
「山中先生、やはり真犯人は、高山真彦ではないかとわたしは思うのです。まあ、あくまでも推測の域を出ていませんが。繋がりそうで繋がらず、途切れそうで途切れない糸が真彦から出ているんですよ」
萩原慎太郎は。素直な気持ちを吐露した。
「それでは、あとは確たる証拠、ですか?」
「そうですね。現場にいたという証拠、もしくは事件に関与していたという証拠ですね。国定にも真彦にも動機があり、アリバイはない。二人の違いは証拠があるかないか、ただそれだけなんですけどね」
「まぁ、証拠があるか、ないか、そのことが裁判では重要なんですけどね」
山中は弱ったという顔で答えた。
「確かに・・・」
萩原は苦笑いせざるを得なかった。
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