Ⅳ 無知の暴露/真実の暴露 2-2

「はぁ、それはなんとも・・・」

萩原たちも、日本の国家権力の組織の一員であったので、なんとも答えようがなかった。

「『疑わしきは被告人の有利に』とは言葉ばっかりですよ・・・いや~、すみません、こんな愚痴ばっかりで」

「いえいえ・・・。先生、次回の証人は?」

新島は話題を変えた。

「次回は、遺族であり、第一発見者である高山真彦さんです」

「そうですか・・・」

「無理矢理になりそうですが、わたしも何か尋問で引き出してみるつもりです」

「はい、期待してます」

新島は言った。

しかし、それでも何か、真彦を追い込めるだけの材料がなければ、それも徒労に終わるだろう、と萩原は思った。

「山中先生、やはり真犯人は、高山真彦ではないかとわたしは思うのです。まあ、あくまでも推測の域を出ていませんが。繋がりそうで繋がらず、途切れそうで途切れない糸が真彦から出ているんですよ」

萩原慎太郎は。素直な気持ちを吐露した。

「それでは、あとは確たる証拠、ですか?」

「そうですね。現場にいたという証拠、もしくは事件に関与していたという証拠ですね。国定にも真彦にも動機があり、アリバイはない。二人の違いは証拠があるかないか、ただそれだけなんですけどね」

「まぁ、証拠があるか、ないか、そのことが裁判では重要なんですけどね」

山中は弱ったという顔で答えた。

「確かに・・・」

萩原は苦笑いせざるを得なかった。

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