「異議あり!」
「異議を認めます」
「家にいましたよ!そんな時間、家で寝てるでしょ、普通」
ふてくされながら叫ぶ高山真彦を見て、検察官は呆れた感じになり、こいつのやりたいようにさせようと思った。
その検察官の表情を、山中は見逃さなかった。
「それでは質問を変えます・・・中島知也・・・という男をご存知ですか?」
「中島?・・・いえ、特には知りません」
知らないはずはないが、中島の名前が出てくるところまでは、さすがに真彦にも想定内か、と山中は思った。
「そうですか・・・先ほど、指紋がでました。中島知也の指紋です」
えっ、そんな!バカな、という気持ちを顔の奥に隠しながら、目だけは驚きを隠せないまま、高山真彦は山中秀行の顔を見つめる。
「高山さんがご存知ないなら、というよりも忘れていらっしゃるなら、もうじき思い出すか、中島知也の方から高山さんのことを喋るでしょう」
「・・・」
真彦も、検察官も、裁判長も、誰も何も言葉を発しなかった。
「どこから出たか、気になるでしょう?刑事さん方が懸命に探してくれました。中島知也ともう一人の指紋。こちらは今のところまだ誰の指紋かはわかっていませんが、それもおいおいわかることでしょう」
「・・・」
真彦は、半信半疑の面持ちで、その身を強張らせた。
山中は、検察官が異議を挟まないのを確認すると、強引に話を飛躍させた。
「指紋がどこから出たのかをお話しする前に、事件の真相をお話ししましょう・・・。
借金の返済に困った犯人は、金貸しの男にそそのかされて、保険金及び遺産目的で両親の殺害をもくろみます。
『金がないなら親に保証人になってもらうとか、なんとかしろ。それができないなら保険金で埋め合わせろ。なんなら血の気の多い奴を紹介してやるぞ』とでも言われたのでしょう。
しかし、そんなふうに言われても、当初は流石にそこまでしようとは思わなかった。しかし、借金が膨らみ続け、もうどうにもならなくなった時、犯人は本気で両親を殺すことを考えた。しかし、自分の手ではもちろんできない。
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