Ⅲ 弁護士の直感+刑事の嗅覚 VS犯人の姦計 7-1

前橋拘置所へ急いだ萩原と新島は、初めて国定徹とガラス越しに対峙した。

萩原慎太郎の胸のうちで、何かが動きだした実感が湧き上がっていた。

「国定、お前は、そもそも昼間の空き巣が専門だったんだよな?」

ガラス越しに、強い口調で萩原が国定に訊く。

「あ、はい・・・」

国定は消え入りそうな声で答えた。

「今まで夜入ったことはないのか?」

「いえ、そんなことは、何度かは、あ、はい、ありますけど・・・」

「そ、そうかぁ・・・」

夜も入るか、萩原慎太郎は、見込み違いだったのかもしれないと感じた。

しかし、まだ何かが萩原の中でくすぶっていた。

「あのう、でも、刑事さん、夜っていってもですね。そんな物騒なことはしませんよ。俺は人を殺してまで、なんぼなんでもそこまでしてやりませんよ」

「ふん・・・」

「本当ですよ、夜に入るのは、そこんちが旅行に行ってる時だとかに入るんですから、はい」

「そんなことがわかるのかぁ?」と新島が国定に尋ねた。

「えぇ、そりゃわかりますって・・・まあ、なんとなくですけどね」

「・・・ん?・・・それは本当か!」

萩原が声を荒げた。

「え?何がです?」

国定が驚いて訊き返す。

「家に人がいないのがわかっているから、入るっていうのは本当なのか?」

「本当ですよ。だって人がいないのがわかっている家に入って盗みをすりゃ、その方がいいでしょうが」

「まあ、それはそうだなぁ」と新島が苦笑いしながらうなずいた。

「ん?・・・」

萩原慎太郎の疼きが、思考回路を突き抜けた。

「だったら、国定!だったらどうして、あの夜、高山さんちに入ったんだ、あの夫婦がいるというのに、なんで押し入ったんだ!」

萩原は早口でまくし立てた。

「違うんだよ、だから、俺は言ったんだよ。本当はいないはずだったんだよ」

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