「国定さん・・・」
山中秀行は、拘置所のガラス越しに国定徹と接見しながら、思わず本音を吐露しそうになっていた。
山中はわからなかった。
正確には、わからなくなっていた。
わからなくなっていたのだが、何がわからないのだか、それすら山中にはわからなかった…。
しかし、遠い靄の向こうに、おぼろげながら真実が見えているのだけはわかった。
「もう一度、順を追っていきましょう。何か見落としていることがあるかもしれないですし、国定さんが新たに思い出すかもしれないですから」
「はい」
「それでは供述調書が、まるきり違っているという訳ではないというのは、その点に関してはよろしいですね?」
「はい。ところどころはおかしいですけど、まあ、だいたいはそんなところです」
「はい。それでは2月27日に下見をしたというのは本当ですか?」
「ええ、本当です。いくら誰もいない夜に入るっていっても、警備会社が絡んでくると厄介ですしね。まあ、その辺は、警報機なんかがあったとしても、切断しちゃいますからその気になれば問題はないですけど、ええ、でもそうなったらなったで用意する道具も違ってきますから」
「はあ、なるほど」
「下見は2月27日で、高山さん宅に押し入ろうと決めたのはいつですか?」
「たしか、その二日くらい前かな」
「いつも、そんな感じで決めているんですか?」
「まあ、いつもはなんていうんですかね。カンっていうんですかね。いけそうだな、って思った時に、まあちょくちょくと」
「はぁ、そうですか。そして週末に決行することに決めた」
「はい」
「3月2日、伊勢崎市内のホームセンター、カインズホームで包丁を購入。これは買っていないと」
「そうです。買ってないですよ」
「包丁などの凶器は普段から持ち歩かない」
「そうですよ」と国定は訴えるように答えた。
山中は『3/2カインズ・監視カメラ・要チェック』とメモをした。
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