Ⅱ 疑惑への疑惑 5-1

「国定さん・・・」

山中秀行は、拘置所のガラス越しに国定徹と接見しながら、思わず本音を吐露しそうになっていた。

山中はわからなかった。

正確には、わからなくなっていた。

わからなくなっていたのだが、何がわからないのだか、それすら山中にはわからなかった…。

しかし、遠い靄の向こうに、おぼろげながら真実が見えているのだけはわかった。

「もう一度、順を追っていきましょう。何か見落としていることがあるかもしれないですし、国定さんが新たに思い出すかもしれないですから」

「はい」

「それでは供述調書が、まるきり違っているという訳ではないというのは、その点に関してはよろしいですね?」

「はい。ところどころはおかしいですけど、まあ、だいたいはそんなところです」

「はい。それでは2月27日に下見をしたというのは本当ですか?」

「ええ、本当です。いくら誰もいない夜に入るっていっても、警備会社が絡んでくると厄介ですしね。まあ、その辺は、警報機なんかがあったとしても、切断しちゃいますからその気になれば問題はないですけど、ええ、でもそうなったらなったで用意する道具も違ってきますから」

「はあ、なるほど」

「下見は2月27日で、高山さん宅に押し入ろうと決めたのはいつですか?」

「たしか、その二日くらい前かな」

「いつも、そんな感じで決めているんですか?」

「まあ、いつもはなんていうんですかね。カンっていうんですかね。いけそうだな、って思った時に、まあちょくちょくと」

「はぁ、そうですか。そして週末に決行することに決めた」

「はい」

「3月2日、伊勢崎市内のホームセンター、カインズホームで包丁を購入。これは買っていないと」

「そうです。買ってないですよ」

「包丁などの凶器は普段から持ち歩かない」

「そうですよ」と国定は訴えるように答えた。

山中は『3/2カインズ・監視カメラ・要チェック』とメモをした。

0 件のコメント:

コメントを投稿