Ⅲ 弁護士の直感+刑事の嗅覚 VS犯人の姦計 4-1

萩原と新島は、署でカインズホームの監視カメラの映像を繰り返し見ていた。

何かを見つけるために、そして見逃している何かがないかを確かめるために。

しかし、何度見直しても、その映像からは何ら手がかりらしきものは得られなかった。

何度見ても国定徹の姿は見つけられなかったし、コンピューターで処理してもそれは変わらなかった。

ナカジマという名前が萩原の頭にこびりついていた。

しかし、「ナカジマ」という名前、それ以上のものは、現段階では得られそうになかった。

やはり、直接、高山真彦をあたらないとダメだな、と萩原は思った。

「新島、真彦に直接行くぞ」

「あ、はい。でも、大丈夫ですか?」

「ちょっと話を聞くだけさ」

萩原は立ち上がり、椅子の背に掛けたジャケットを取った。


高山真彦のアパートは、太田市内の街中にあった。

事件があった高山家からは、車で10分位離れたところだ。

新島がチャイムを鳴らすと、中からだるそうに真彦が出てきた。

金遣いの荒そうな男の乱雑な部屋だった。

「なんですか、刑事さん?まだ何か用ですか?」

「いや~用ってほどじゃないんですがね・・・」

新島が軽い口ぶりで言った。

「忙しいんですよ」

「すみません、すぐ終わりますから。今からお仕事ですか?」

「いえ、違いますけど、悪いですか?」

「いえいえ、お手間は取らせませんから・・・」

「高山さん、あなた借金がありましたよね?」

萩原は単刀直入に訊いた。

「えっ・・・それがなにか?あったら悪いですか?」

「悪いとか良いではなくて」

「ええ、ありましたよ。それまではITバブルでいい感じだったんですけどね、バブルが弾けたら事業がポシャッちゃいましてね」

「すごいですね、青年実業家ってやつですね。そうですか、それでは借金もかなりの金額ですよね?」

新島がへりくだった感じで言う。

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