「・・・」
真彦は悲しそうに顔を伏せた。
「失礼。辛いことを思い起こさせてしまって、すみません」
「いえ、大丈夫です」
「高山さんは、事件の第一発見者ですよね?」
「ええ、そうです」
「その時のことをお話しいただけませんか?」
「はい。あの日は、朝、電話したんです」
「何時頃?」
「7時とか、まあ、そのくらいです」
「いつもそのくらいに電話をしたりするのですか?」
「まあ、時々は。決まった時間とかは別にありません」
「そうですか。その日はどんな用事の電話でしたか?」
「・・・」
「証人は黙秘権がありますので答えたくなければ、答えなくて構いません」
押し黙っている真彦に裁判長が言う。
「・・・」
「質問を変えます。高山さんはその頃、多額の借金がありましたか?」
「異議あり!本件とは関係ありません」
検察官が横やりを入れた。
「認めます」
「ありましたよ。そうですよ、そのための電話ですよ。それが何か悪いですか?」
法廷内が少しざわついた。
「静粛に!」
裁判長がムッとしながら木槌を叩いた。
「その借金はどれくらい?」
「2000万ですけど」
「それで、どうされました、その借金は?」
「返しましたよ。ちょうど、保険金が出たんで!悪いですか?いけないことですか?親が殺されて、こんなことまで言われて・・・なんだっていうんですか?犯人はそこにいる奴でしょ?」
高山真彦は、ほとんど泣きだしそうになりながら叫んだ。
「証人は落ち着いて話すように。話したくないことは話さなくてもよいのですよ」
裁判長が真彦を諌めた。
「・・・はい。すみません」
「高山さんは事件のあった時間、どこで何をしてましたか?」
山中がなんでもないように訊いた。
0 件のコメント:
コメントを投稿